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「Boiler Room社との協業へのCANTEENの方針表明」の背景と自分の意見

CANTEENによる声明の背景

CANTEENがBoiler Room社と協業をするにあたって発表した声明が大きな話題になっています。
https://www.instagram.com/p/DOqD2MdEtpR/?img_index=1

以下がその全文。

Boiler Roomとの協業について
CANTEENは、2023年より Boiler Room 社と協業し、Boiler Room: Tokyo および Boiler Room: Osaka のイベントについて、 キュレーションおよびイベント制作を行っています。

CANTEENは、日本のアーティストの持続的な成長を支えることを使命に、これまで多種多様なアーティスト、クリエイターを世界へ繋いできました。これまで日本で開催された Boiler Room に出演した多くの日本のアーティストが、活躍の舞台を世界に広げています。私たちは、国内のアーティストが国際的な舞台で活躍する機会を広げるため、本協業を重要な機会だと捉えています。

一方で、本協業に関し、Boiler Room 社の最終親会社である KKR およびその投資先に対して社会的な懸念があることを承知しています。そこで私たちは以下の方針を明確にします。

1.戦争・暴力・差別に反対します
CANTEENは、戦争行為・差別・暴力に反対します。ガザ地区におけるイスラエルによる虐殺と戦争犯罪、パレスチナの人々の人権を侵害する行為、国際法に反する行為を強く非難します。

2.協業の目的は日本発の才能の支援です
本協業は、日本のアーティストが国際的な舞台に立つ機会を広げるためのものであり、 文化交流を通じて日本のアーティストの活躍を支援することを目的としています。

3.PACBI 「イスラエルに対する国際的文化ボイコットガイドライン」を遵守します
Boiler Roomは、イスラエルに対する国際的な「ボイコット、投資撤収、制裁」運動 (BDS運動)を主導する「イスラエルの学術・文化ボイコットのためのパレスチナ・キャンペーン」 (PACBI) が掲げる「イスラエルに対する国際的文化ボイコットガイドライン」を遵守しており、その取り組みはBDS 運動からも承認されています。CANTEENもこのガイドラインを支持し、本協業においてもこのガイドラインを遵守します。

4.本協業の収益がKKRに渡ることはありません
Boiler Room: Tokyo および Boiler Room: Osaka における収益が、親会社である Superstruct および最終親会社である KKR に直接渡ることはありません。このことはBoiler Room 社のステートメントにおいては明言されていないものの、CANTEEN が同社に直接確認しています。

5.本協業の収益の一部を人道支援に寄付します
CANTEENは、Boiler Room: Tokyo および Boiler Room: Osaka から得る利益の一部を、人道支援団体に寄付します。 寄付の実行後は、寄付金額と送金証明を公開します。

6.編集・制作の独立性を堅持します
Boiler Room 社のステートメントにあるように、Boiler Room におけるプログラム内容・アーティスト選定・制作判断などの編集権はすべて Boiler Room 社に属し、それらの内容は Superstruct や KKR を含むあらゆる外部資本の意向に左右されることはありません。 本協業においても同様に、編集権は Boiler Room 社と CANTEEN に属します。今後、編集権の独立性が損なわれる状況が生じた場合には、協業を停止します。

CANTEENは、暴力と差別に反対し、日本のアーティストの持続的な成長を支えるために求められる責任を果たします。私たちは、文化が人々をつなぎ、相互理解を育む力を持つと信じています。

株式会社 CANTEEN
代表取締役 遠山 啓一

以下がInstagramに投稿された画像です。

これだけだと話が全然分からない人も多いと思うので、補足説明をしていきます。

まず「Boiler Room 社の最終親会社である KKR およびその投資先に対して社会的な懸念がある」については、ele-kingによる『DREAMING IN THE NIGHTMARE 第2回 ずっと夜でいたいのに――Boiler Roomをめぐるあれこれ』という記事に簡単にまとめられているので、以下に引用します。
https://www.ele-king.net/columns/regulars/dreaming_in_the_nightmare/011720/

 

 Boiler Roomはつい最近、SonarやDGTL、Thunderdomeなど世界各地の大規模な有名フェスを運営する会社であるSuperstructに買収された。そのSuperstructを所有しているKKRという会社は、他にも多数の会社と所有や投資という形で繋がっているのだが、その会社というのが軍需産業であったりイスラエルの違法な植民地政策を支える会社であったりするということらしい。要するにBoiler Roomで生まれた利益は川を辿ってKKRへ向かい、KKRによる投資という形で軍需産業や植民地政策のための企業へと流れ着くということである。
 批判を受けたBoiler Roomは、我々は親パレスチナであり、親会社とは価値観を共にしないという声明を出した。そしてPACBI(イスラエルに対する学問・文化ボイコットのためのパレスチナ・キャンペーン)は、BDSガイドラインを参照した上でBoiler Roomが出した声明に対して勇気あるものとして好意を示した。しかし、多くの親パレスチナや反アパルトヘイトの立場をとるアーティストからは、声明を出したところで利益が植民地政策のために使われることには変わらず、ただ親パレスチナだという声明を出しただけであることを含めてアートウォッシングであると批判されている。これが大まかなBoiler Roomを取り巻く現状である。

また、ここで言及されているKKRという会社についてのもう少し詳しい解説を、WIREDの「イスラエルとの関係”に抗議、アーティスト大量ボイコットで揺らぐ有名音楽フェス」という記事から引用しておきます。
https://wired.jp/article/music-festival-artist-boycott-kkr-israel-palestine-conflict/


Superstruct Entertainmentを買収し、一連の抗議活動の発端となったKKRとは、いったいどんな会社なのか。KKRは1976年に創業した米国系の大手投資ファンドで、非上場企業に広く資本を投じてきた。近年ではエンタテインメントやテクノロジーの分野へも進出している。 一方で、イスラエルとの関係が深いことでも知られている。分類広告サイト「Yad2」を通じて間接的な関与が指摘されているほか、防衛関連や監視技術の企業に投資してきた過去もある。 Yad2はイスラエル最大級の広告プラットフォームで、ヨルダン川西岸地区・東エルサレム・ゴラン高原の不動産広告を掲載している。このうち2,000件超が西岸の入植地物件だとされている。実際に「地名+不動産」をキーワードにヘブライ語で検索すると、このサイトが検索結果の上位に多数ランクされていた。KKRは2024年、このサイトを傘下にもつドイツのメディア大手Axel Springerの分類広告事業の85%を取得している。 こうした背景からKKRは、イスラエルによるパレスチナ占領と人権侵害に抗議する「BDS運動(ボイコット・投資撤退・制裁を求める国際キャンペーン)」からもボイコットの対象とされている。

ここで言及されている「BDS運動(ボイコット・投資撤退・制裁を求める国際キャンペーン)」とは、2005年にパレスチナの170の市民団体による呼びかけによって始まった、「B(Boycott)消費者の不買呼びかけ」「D(Divestment)企業への投資引揚呼びかけ」「S(Sanctions)国家・国際機関への制裁呼びかけ」の三本柱による運動です。より詳しい説明として、公式サイトによる以下の記事を載せておきます。とくに、BDSが組織的な運動であり、戦略的にターゲットを絞っているということは今回の騒動を捉えるにあたっても重要なポイントだと思います。
BDS Guide to Strategic Campaigning for Palestinian Rights | BDS Movement
https://www.bdsmovement.net/bds-guidelines/bds-guide-strategic-campaigning-palestinian-rights

さらに参考資料として、以下にはBoiler Roomが出した声明についての記事、それを受けてのPACBIの声明も重要だと思うので載せておきます。
Boiler Room releases statement addressing its Israel-linked ownership following growing boycott – – Mixmag Australia
https://mixmag.net.au/read/boiler-room-releases-statement-clarifying-its-israel-linked-ownership-following-growing-boycott-
PACBI welcomes Boiler Room’s endorsement | BDS Movement
https://www.bdsmovement.net/news/boiler-room
PACBI:イスラエルの国際的文化ボイコットガイドライン – BDS Japan Bulletin
https://bdsjapanbulletin.wordpress.com/2024/01/27/pacbicultural/

また、他には以下のØya Festivalの事例が参考になるので、こちらもぜひ読んでください。
イスラエル・KKR問題の渦中で開催された音楽フェスの葛藤、突きつけられた問い【北欧Øya Festival現地レポ】 | Rolling Stone Japan(ローリングストーン ジャパン)
https://rollingstonejapan.com/articles/detail/43486/1/1/1

自分の意見

さて、文脈を簡単にまとめたところで、CANTEENが出した声明について自分の意見を述べておきたいと思います。まず、私は今回CANTEENが(理由はどうあれ)KKRの問題に言及し、明確にイスラエルに抗議する立場を表明したことに賛同します。自分としては、Boiler Roomのような大きな場でこうした立場を表明することの利益は、ボイコットをしないことによる不利益を上回るのではないかと思っています。なので、CANTEENがBoiler Roomをボイコットすべきだという意見に自分は(条件つきで)反対の立場です。つけ加えていうならば、CANTEENがこうした声明を出したことはBDS運動の成果のひとつだと思っています。

というのを前提にしつつ、今回の声明には気になる部分がいくつもあるのでここで指摘をしておきたいと思います。

➀「ガザ地区におけるイスラエルによる虐殺と戦争犯罪、パレスチナの人々の人権を侵害する行為、国際法に反する行為を強く非難します。」と書かれていますが、いつどのような手段を用いて非難をおこなうのでしょうか。たとえば、イベント中にイスラエルに抗議するナレーションを入れたりとかいったことはありますか?もし、この声明の内容以外に何もするつもりがないのであれば、批判をかわすために書いてみただけで本当はそんなにやる気がないのかな?と思ってしまいます。たとえば、先にあげたØya Festivalの記事によると以下の取り組みがなされているので、ぜひ参考にしてほしいです。


Øyaはパレスチナで起こるジェノサイドや占拠という問題に対して、どのような役割を果たすことができるだろうか。彼らが具体的に実践したことは大きく分けて以下となる。
1. フェスをより多くの人々にパレスチナに関わる問題を知ってもらい、行動を起こしてもらうためのプラットフォームとして活用すること
2. 1の目的に基づき、アーティストや観客を含めてパレスチナに関する表現や声明を禁止しないこと
3. フェスに反対する組織や団体との議論を続け、その内容をオープンにすること

②余計なお世話かもしれませんが、出演者の方々とはちゃんと連携が取れていますか?現在の状況でBoiler Roomに出演することは短期的にも長期的にも様々なリスクが考えられますが、どの程度適切に共有されているのか不安になりました。それと今回の声明について、もちろん出演者の方々には事前に連絡して承諾を受けていますよね…?また、現時点ですでに出演者への批判も散見されていますが、会社としてどういったフォローができているのかも心配です。

③「Boiler Room: Tokyo および Boiler Room: Osaka から得る利益の一部を、人道支援団体に寄付します。」とありますが、せめてどこの団体に寄付するのかは書いてほしいです。

④イベント当日は、出演者側からも観客側からもパレスチナに連帯する動きが起こることが予想されますが、会社としてはどういったサポートを考えているのでしょうか。再度Øya Festivalを例に出すと、記事によれば「フェスではパレスチナの旗やパレスチナ支持を表明するポスターの持ち込み、メッセージの発信が禁じられなかったため、パレスチナのスカーフやリストバンド、バッジを付けた観客が会場では数多く見られた。」とのことです。このあたりもしっかり明言されていてほしいところです。

最後に

ぶっちゃけ今回のCANTEENの声明を読んだ最初の素直な感想は「なんかとってつけた感がすごいな、、、」でした。(とくに「2.協業の目的は日本発の才能の支援です」「5.本協業の収益の一部を人道支援に寄付します」は言い訳っぽさが強すぎてむしろ印象がより悪くなったのでは…?)
この声明で終わることなく、今後もっと踏み込んだ内容にブラッシュアップされることを期待します。

追記

本記事にたいする指摘を受け、以下に声明にたいする批判を追加します。

⑤「Boiler Room: Tokyo および Boiler Room: Osaka における収益が、親会社である Superstruct および最終親会社である KKR に直接渡ることはありません。このことはBoiler Room 社のステートメントにおいては明言されていないものの、CANTEEN が同社に直接確認しています。」とありますが、実際にどのような金銭の動きがあるのか明文化されない限りは「口だけならなんとでも言える」としか思えません。また、仮に直接収益が渡ることがなくても、例えばBoiler Roomの評価を高めることはPEファンドであるKKRが売却益を増やすことに繋がります。CANTEENには、今回のBoiler Room開催にあたってどのような利益をKKRにもたらす可能性があるのか、詳しく説明してほしいです。

また、現在CANTEENに対して「アートウォッシュ」であるという批判が高まっています。私も現状のずさんな声明ではそのように考えるしかないと思っています。この記事がCANTEENに届き、改善の動きがあることをあらためて強く望みます。

その後について

2025年10月11日・12日にBoiler Room: Tokyoが、2025年10月25日に Boiler Room: Osakaが開催されました。出演者は下記の通りです。

Boiler Room: Tokyo
riria、Big Animal Theory、play in stereo、Pointhope、Xing Xing、NENE(ゲスト出演:Elle Teresa)、MARZY、KOLLIN、Public Property Princess、ryota、Sumo Jungle、Albino Sound、Eichi Abe、MoEPiKA、Romy Mats

Boiler Room: Osaka
GOTH-TRAD、Jin Dogg、Violent Magic Orchestra、YUVIE、ShioriyBradshaw、syunsan、nazanael、Miyabi、m20

イベント当日にCANTEENから声明にかかわるような動きがあったことは確認できていません(私自身はイベントに参加できていないので、各種SNSの情報だけを頼りにしています)。また、出演者からのイスラエル批判やパレスチナへの連帯の表明等も確認できていません。

2025年12月15日にCANTEENがInstagramを更新し、寄付の報告をしました。

https://www.instagram.com/p/DSSB_M9ElJ3/?igsh=cjIzZDh4bmFvZGJi&img_index=1

以下がその全文。

画像一枚目
10月11日、12日のBoiler Room: Tokyo および10月26日のBoiler Room: Osaka につきまして、以前のステートメントで述べた通り、 利益の一部および寄付を申し出てくださった出演アーティストのギャランティを、THE PALESTINIAN MEDICAL RELIEF SOCIETY に寄付いたしました。
寄付相当額:1,022,593円
あらためまして、ご来場いただいたみなさま、 寄付に同意いただいた出演アーティストのみなさま、ありがとうございました。
株式会社CANTEEN
代表取締役 遠山啓一

画像二枚目
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